◆ 精神医療と当事者は今 新型コロナの影響は? ~2020.5.27 NHKハートネットTVより~

新型コロナウイルス感染症が蔓延する中、「精神医療や当事者を取り巻く現状、そして課題」についてNHKにおいて放映されました。精神医療現場における感染症対策は喫緊の課題です。

精神科医療が果たしている役割上、診療科の特殊性を考慮して十分な対策を行わなければ、院内に感染症を持ち込み、クラスター化し易いことが懸念されます。既に我が国の精神科病院における新型コロナウイルス感染やクラスターの発生が複数報告されています。一方、感染を不適切に恐れ、措置入院や精神科救急事例の受け入れを忌避することで地域の精神医療が滞ることがあってはならず、また精神疾患患者であるということで、本来受けるべき感染治療が受けられないという事態もあってはならないことです。

新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する中、精神科病院や精神障害の当事者にも大きな影響が出始めています。精神科病院は閉鎖性が高い上に、たとえ新型コロナウイルス感染症の陽性者が出ても専門病院から転院拒否されることが多く、感染が拡大するリスクが高い現状があるなかで抜本的な解決策がないまま、その余波は在宅の当事者たちにも及んでいます。医療機関を取り巻く現状と、その課題にどう対処していくべきかを生放送で考えました。

精神科病院の特殊性を考慮して十分な対策を行わなければ、院内に感染症を持ち込み、クラスター化し易いことが懸念されます。

【現状と課題】

☉感染症の専門医不在。

☉精神疾患の患者は、検査、治療を後回しにされる傾向があり、転院を待つ間、院内感染が広がる。

☉精神科病院は密閉箇所が多い。

【医療者・当事者の声】

☉病院は、精神科のみを扱う単科病院で、マスクや防護服が不足していることなどから、感染者の対応が困難だと県に転院の相談をしたが、入院治療の継続を要請された。

精神症状がある患者ということで転院できず、結果として感染者を出してしまい遺憾に思う。感染した精神科の患者の受け入れの仕組みが必要だ。

☉精神科に入院していたせいで、新型コロナウイルスの治療を受ける機会を奪われてはならない。精神疾患があっても同じ人間である限りは、医療を受ける機会は平等であってほしい。

☉診療時間が減った。まわりとのつながりがなく、不安。

精神科病院では、新型コロナウイルスの陽性者であっても精神疾患があることで感染症の専門機関への転院を拒否されるケースも少なくなく、感染リスクが高い状況にあるという。 当事者たちも必要な医療を受けられなかったり、環境の変化によって不安定になったりもしています。

5月27日の放映で、精神科病院の院内感染が放映されていましたが、翌日の5月28日に東京小金井市の武蔵野中央病院(精神科病院)の閉鎖病棟でクラスターが発生。感染症の専門医不在、精神科特例による少ない医師、看護師の配置人数の減少…。接触した医療従事者が自宅待機となり、さらなる精神的・肉体的負担が職員・患者を直撃していること、患者の感染者受入れを他病院が拒否すること(※今迄も他の疾病で入院治療を要する場合、病院側が受入れを拒否する偏見・差別実態は常態化していた)、保護室を隔離室として対応しているため入退院は停止状態になったことなど、深刻な実態が全国報道されました。

都立松沢病院では常に感染リスクと隣合わせの中で、感染症対策の専門家とチームを組み、精神疾患と並行して治療にあたっています。医療従事者の皆様の献身的な対応には、心から感謝申し上げます。

(じんかれんニュース2020年8月号掲載)

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