家族会とは~その芽生えと成り立ち~
統合失調症、うつ病、躁うつ病などの精神疾患をもつ人を身内にかかえる家族が集まり、同じ悩みを語り合い、互いに支え合う会が家族会です。
ルーツをたどれば40数年前、今以上に偏見と差別が強い中、まず家族に病気をきちんと理解してもらおうと、一部の病院や保健所が開いた学習会に家族が参加したことから家族会は産声をあげました。学習に端を発し、その後は、主体的に活動の幅を広げながら地道に家族としての努力を積み重ねてきています。
家族会には大きく分けて、病院を基盤とする病院家族会と病院とは無関係に地域を基盤とする地域家族会があります。 さらに近年は作業所など、地域施設を基盤とする会、地域の枠を超えて有志が結成した会など、そのスタイルも多様化し、また、法人格をもつ会から小人数で膝を交えての会まで、その規模もさまざまです。現在、家族会は全ての都道府県にあり、その数はおよそ1600にのぼります。
家族会の活動~家族会の3本柱~
家族会の活動の根幹は、次のような「相互支援」・「学習」・「社会的運動」で、これは家族会の3本柱と呼ばれています。具体的には ・・・
1.相互支援(助け合い)
・語り合う
「自分だけが悩んでいるのではなかった」「思いを受け止めてもらえた」など、仲間がいるという発見を通して安心や癒しを得られる場です。
・相互交流
語り合うだけではなく、レクリエーションや行事を開催し、参加することで相互の親睦を深め、さらなる経験や活力を得られる場です。
・情報交換と手助け
情報社会といわれますが、現実にはどんな病院があるのかさえ個人のレベルではわからない状況で、家族会はより具体的な情報を交換できる場、また、本当に困っているときに実際的な手助けを得られる場ともなります。 不特定多数の人に向けて、無数の情報が発信されている中で、情報そのものについて、正しいか、誤っていないか、偏っていないか、新しいものか、古いものかなど、一人ひとりが判断することの難しさが指摘されますが、同じ悩みを共有する「家族会」では、仲間の成功例、失敗例、対処の仕方など生の声を聴き、自分にあった情報を得ることが出来、役立ちます。
2.学習(学び合い、知見を広める)
今や家族が学ぶべきことは、病気や治療に関することだけにとどまらず、リハビリ・福祉制度や障害者に関係する法制度、利用できる社会資源など多方面にわたります。家族会では、これらの学習を、家族教室・研修会・講演会・施設の見学会などを通して実践しています。また多くの場合、家族が聞き手としてだけ参加するのではなく、家族としての声を発し、話し合える場が確保されています。
3.社会的運動(外に向かっての働きかけ)
医療や制度などの改善を要求し、作業所やグループホームなど社会資源の開発や運営にも力を入れてきました。現在、福祉制度や計画に向けての当事者としての発言、署名活動・陳情、会議への参加、広報・啓発等々、家族の対外的活動が重要な位置を占めるようになりました。さらに家族自らがその経験と知恵や知識を踏まえ家族相談を展開しているところも増えてきています。
よく、育て方や接し方が悪かったからと御家族自身が自分を責めてしまうケースもありがちですが、それは患者をも含む関係者が傷つけあい、心身が疲れて弱ります。
ところで、統合失調症の症状や経過には個人差が大きく、病気との付き合い方も人それぞれですが、それは患者と関わる家族にも言えることでしょう。
家族は統合失調症の症状に苦しむ患者と共に、大切な家族が苦しんでいるという現実に苦悶しながら悲しみや怒りの感情に身を包まれます。社会的インパクトが孤立させてしまう家族の苦悩。患者が医療に支えられる一方で、これといった支えを持たない家族の苦悩と疲労は計り知れないものです。
そのような家族の心は一体、何によって支えられ、どのような力によって困難を超えていこうとするのでしょうか?激しい症状により急変した、愛する家族を目の当たりにして、今ここにない未来を信じ続けることができない時。具体的で的確な情報や助言を受け入れる余力すらなくなってしまった患者家族。そんなとき、統合失調症の家族の対応について、教科書的な数々のアドバイスも確かに参考にはなるでしょう。しかし、親子、夫婦、兄弟、単身者など、患者家族の関係性や生活環境も様々で、世代間による価値観や体力的条件も全く違う以上、その答えは患者家族の数だけ存在するのです。
では、自分たちにベストな答えを導く方法とは何か?ひとつは、他者の体験を知ることです。
かかっている病院から得るアドバイスを軸に、インターネットからの情報収集や、他者の体験を知ることは、自分達なりのベストな対応や接し方を模索するための知恵となり勇気ともなり得ます。
病気について学んだ知識は自分に合った自分だけの知恵に変わり、他者の体験談を知ることによって、今までの自分の不安がこれからの勇気に変わるのです。さらに、同じような問題を抱える家族感情を知ることで得られるもの……それは、絶望という名の海に希望のかけらを探し続ける人々が「自分ひとりではない」と感じられることの力とか、ぬくもりとか、そして未来への勇気です。
行き場のない怒りや、突き上げる悲しみ。そして、とてつもない疲労感。
面会を終えて閉鎖病棟を後にした時、空を見上げれば、「希望よ、高く舞い上がれ」と願うばかりなのに、病棟を振り返れば絶望感に打ちひしがれる日々。明けない夜はない!そのひと言さえも信じられぬとき、家族は〝今〟と〝自分〟と全てが消えてしまえば楽だろうな……と、考えるかもしれません。症状の重い精神疾患が家族に及ぼす問題は、そこにあります。
これは、予後不良と見放された後に劇的な回復を遂げた妻と、支えた夫のストーリーです。
千差万別、ひとつひとつ形の違う問題を背負った患者家族の心の持ちようについて、この体験が小さなヒントとなるかもしれません……
(インターネットより)
精神障害者家族会とは
精神障害者家族会は、精神障害者を抱える家族が集まって運営をしています。
各家族会は毎月定例会をひらき同じ悩みを持つ方々が気兼ねなく話をすることで、互いに助け合う場を作っています。
なかなか思うように行かない事が多いのが、この障害(病気)です。 悩みや苦しみ、経験を語り合い、また社会復帰・社会参加ができるように、勉強会や研修会、懇親会などを行い、病気のこと、お薬のこと、本人への接し方などを学びます。
また、みんなの力をあわせて、法改正・整備の必要性を訴えたり、精神障害者の保健福祉を充実させるための福祉制度・しくみ等の実現を関係機関へ働きかける運動も展開しています。
家族会では
ご家族の方々に下記のような症状がみられるようになって、どうしたらいいか迷っている方々が、 お互いの悩み、疑問、失敗談、成功例などの情報を交換し合い、助け合いながら元気になっていきます。
・精神科のお医者さんに連れていきたいけど、本人が行きたがらない。
・精神科のお医者さんに診てもらったけど、どうしても納得がいかない。
・本人が病院から出された薬を飲もうとしない。
・退院したが全く外出できない。
・作業所ってどんなところ? 福祉施設につながるにはどうしたらいい?
・働きに出るが、3ヶ月と持たない。
・兄弟(友人)が精神病とお医者さんから診断された。兄弟(友人)としてなんとかしてあげたい。
・その他、心の病について、薬のこと、本人への対応、作業所ってどんなところ?
家族会の役割
《平成29年11月2日 埼玉県連精神障害者家族連合会
関東ブロック大会報告より》
家族会は家族自身の元気を取り戻すための場であり、お互いが安心して、自分の苦労、悲しみなども語り合える場です。又、年金、社会資源、薬のことなど、学び合う場でもあります。
〈私にとっての家族会〉
・・・狭山市精神障害者家族会 M.S.さん
・安心の場―人に言えないことを安心して言え、分かってもらえる。仲間の喜怒哀楽を共感できる。
・勉強の場―病気の事、社会資源の知識や情報、対応の仕方、多くの方の体験など家族会活動を通して多くの事を学んだ。「家族による家族学習会」では、学習・体験の語り合い―共感を通して、家族自身が地域に働きかける力を持っているという事を学んだ。
・出会いの場 当事者・家族・誠実な支援者・専門家の実践や体験・書物等
・自己受容の場 迷いや怯えからの解放で気持ちが軽くなった。息子と自分に向き合う勇気をもらった。優しくなれたりした。
“支援者は自立のきっかけを作って!”
親の言う事など聞かなかった当事者が支援者(主治医)の「一人暮らしをして見るか」の一言で現在週3泊4日のアパート生活をするようになった。親は押し付けになりがち。支援者は積極的に進めてほしい。
〈訪問診療に力を入れる院長〉
・・・さいたま市精神障害者だるまさんクリニック院長西村秋生氏
診察室で上から目線で診ていた当事者を、訪問診療することにより、「こんにちは」の挨拶から始まり、やりたいことは?薬どう?など、気安く声かけができ、生活の場を知ることで、話題が変わり本人の態度に変化がみられた。1日、5人ぐらいしか訪問できず、経営的には苦しいが、やりがいはある。
〈埼玉県やどかりの里〉
・・・精神障害者の自立を目指す施設運営に携わる常務理事増田一世氏
やどかりの里では,関わる1人1人が主人公です。互いの意見や考え方を尊重しながら,学び合い,話し合いに基づき創造的な活動を展開しています。病気や障害があっても健康を守って暮らすこと,働くこと,活動することを大切にします。
病気や障害の体験から学び,体験や実践から生まれた知恵をみんな(社会)の知恵にしていきます。
〈地域支援に関わった経験が家族研究に〉
・・・家族研究に取り組む大阪大学大学院准教授蔭山正子氏
・支援する・されるの関係や、仕事の関係では本当の意味で、家族や当事者のことを理解できない。
・対等に、本音で話せることで、やっと理解が進む。飲み会やお茶会が大切!
・人を信頼する、共に活動することの楽しさを知る。
私は、家族会の方のおかげで研究者として、また、人として成長できた。ご家族に育てられた。
埼玉県精神障害者家族の実態調査
《平成29年11月2日関東ブロック大会配布資料より》
【要約】
・回答者の多くは、40~50代の子をもつ60~80代の親であり、10~20代に発症後、長年支えている。
・約8割で子と親が同居しており、子が自立できていない。
・多くが障害年金2級を収入としており、経済的に余裕がない。
・通院はしているが、通院以外は家にひきこもっている人が3分の1を占め、家族以外との社会的交流がなく、孤立した状態で生活している人が多い。
・家族の悩みの最多は、親亡き後の本人の生活である。生活も収入も親に頼っている状況であり、自立に向けてどう対処したらよいかわからず、ただ不安だけが募っている。
【解決に向けて】
本人が社会とつながるには、アウトリーチの充実(ピアサポートの活用含め)が不可欠。
アウトリーチによって本人が社会とつながり、将来的には、親と別に暮らし、生活面も経済面も自立できるような支援体制を早急に整えることが、さしせまった問題である。
精神疾患や障害のある本人とその家族は、互いに最も身近な存在であるがゆえに、よい関係を保つことが難しい場合があります。例えば、「アルバイトがしたい」という本人の希望に対して、「疲れて体調を崩し、病気が再発したら大変だ」と心配して、「もう少しよくなってからにしよう」とさとしたり、あるいは「病気が安定してさえいればそれでいい」と考え、家事や買い物など本人ができることさえも、家族がやってしまったりしている場合もあるでしょう。これでは、転ばぬ先の杖になってしまい、本人のもっている力さえも発揮されません。
しかし、家族はどんなに知識や情報を増やしても、その立場に変わりはありません。本人を人一倍心配しますし、愛情があるために、専門職のように、客観的な視点で対応することは難しくて当たり前なのです。そこで、本人と家族の間に新しい風となるような第三者、専門職や行政など、家族だから見えにくい部分をサポートしてくれる人の存在が必要になってきます。
家族は本人と同じように苦しい気持ちを抱えています。そして、家族自身のことを理解してほしい、話を聞いてほしいとも思っています。病気や障害のある本人が最も苦しんでいるのだから、本人を支えることがいちばん大事なことだと考えがちです。しかし、本人とともに揺れ動き、疲れている家族にも支援があるべきではないでしょうか。
本人への支援と同様に、家族に対しても支援がなされれば、家族は安心し、ゆとりも生まれます。ゆとりが生まれるということは、家庭内の緊張感が解け、家族一人ひとりが自分らしい生活を送ることにもつながっていくことでしょう。家族にも家族の人生を生きる権利があります。社会で支えるしくみをつくり上げていくことが必要です。
《公益社団法人全国精神保健福祉会連合会相談員高村裕子氏
インターネットより》
皆さまへ
神奈川県下にあった家族会の連合会として、「NPO法人じんかれん」の前身である「神家連」が結成されてから50年の歳月が流れました。
精神疾患を持つ人は、社会から“隠されて”生きるしかなかった発足当時の状況を思うとき、家族会を運営していく苦労は並大抵のことではなかったことと想像に難くありません。それでも、“必要性”があったからこそ、家族会活動は続けられ、少しずつ発展してきました。一人ひとりの家族の力は小さくても、手をつなぎ合い、勇気を持って社会に向かって声を上げ、共に歩みを進めることは、社会をゆっくりと変える大きな力となりました。
この十数年の間に、精神障害者に対する法改正や、精神科医療が地域中心へと大きく変わってきております。しかしながら住み慣れた社会で安心して暮らせる共生社会の実現は、地域生活支援拠点が整備されていない状況で、まだまだ満足できるものではありません。地域で生きていく上での様々な支援を担う制度を構築するために、家族や関係者、福祉の専門職が継続的に集まり、本人が中心となり協議するような連帯づくりが求められていると思います。
今後、高齢化が進み「親亡き後」という新しい課題も出てきておりますが、住み慣れたまちで、本人が自立し、安心して暮らしていける地域作りに向けて、ご一緒に知恵を出し合って行きませんか。じんかれんは、これからも、家族の皆様とご一緒に歩んで参りたいと思います。
平成29年11月
作成:じんかれん広報部