◆精神科病院における入院患者に対する集団虐待・暴行事件に関する緊急声明
2020年3月4日、精神科病院の職員が、入院患者に対する集団虐待、暴行の疑いで逮捕されました。この事件を受けて、3月11日に、「みんなねっと」と、「コンボ」が声明を発表しました。事件の概要と声明文を報告致します。
【事件の概要】
神戸市西区の精神科病院 医療法人財団 兵庫錦秀会 神出(かんで)病院(びょういん)の男性看護師ら6人は抵抗のできない重度の認知症や精神疾患患者複数に虐待と暴行を加えたとして監禁と準強制わいせつの疑いで逮捕された。報道で明らかになった動画では、トイレで椅子に裸で座らせ、ホースやバケツで水を浴びせるなど暴行を加えたり、男性患者を病室の床に寝かせ、落下防止柵付きのベッドを逆さまにして覆いかぶせたり、最低限の尊厳を否定する、人としてあり得ない、非人道的な許せない行為を繰り返していた。
医療関係者が患者に暴行する事件は後を絶たない中で、6人もの人間が関与するケースは極めてまれ。医療現場や患者家族らにも動揺が広がっている。神出病院の虐待はいずれも勤務人数が少ない夜間に起きており、県警は、閉鎖的な職場環境が虐待の温床になった可能性もあるとみて動機の解明を進めている。又、経営者幹部らは、長期間虐待、暴行を繰り返していた事実に気づかなかったとしている。
精神科病院における入院患者に対する集団虐待・暴行事件に関する声明
神戸市西区の医療法人財団兵庫錦秀会神出病院の入院患者に対する虐待・暴力事件で、看護師等6名が兵庫県警に2020年3月4日逮捕されたことが報じられました。
私たち家族会は「患者のリアクションが面白かった」という理由で平気で尊厳を踏みにじることに強い憤りで一杯です。精神科病院の医療従事者による患者に対する虐待・暴力行為は非人道的重大事案です。虐待事実の凶暴性や残酷さを断じて許すことはできません。
報道で明らかになった動画だけでも、虐待・暴行が長期にわたり看過されてきていたことは否めません。病院という外部からは見えにくい密室の中で、人間の尊厳を踏みにじられた行為が日常化していることに、怒りと恐怖を覚えます。病院の法令順守と幹部責任はどうなっているのでしょうか。
今回の事件は、患者や家族、病院の内部告発などではなく、加害者である元看護助手が別件逮捕にともなって明るみになったこと、警察からの連絡を受けてもなお、複数の職員が関与しているにも関わらず、病院幹部は全容を把握していないことなど、特異な問題発覚です。ともすれば、病院組織を挙げて、外部に漏れないようにしていたのではないかと勘繰ってしまうほどです。
神出病院は、リスク管理のできていない体質・病院組織のあり方を猛省し、事件の重大さを真摯に受け止め、緊急に事件全容解明すると共に、全患者・家族に対しても調査をすべきです。併せて監督者としての神戸市の早急な責任ある対応を強く求めます。
精神科医療は、精神疾患の本人・家族にとって、自らの生活を安心して送るための支えです。その場が、私たちの尊厳を踏みにじる場であれば、とても危険で、根絶しない限り利用することはできません。
この事件を一病院の問題に留めず、行政機関を含む権利擁護システムが機能不全とならぬように、精神科医療のあり方についても今一度精査すべきです。でなければ、もっとも立場の弱い患者に対する虐待・暴力等の温床を残すことになりかねません。
私たち公益社団法人全国精神保健福祉会連合会は、精神障害者と家族の権利擁護の実効に向けて、所管行政の責任ある迅速な対応を求めます。
2020年3月11日
公益社団法人全国精神保健福祉会連合会
理事長 本 條 義 和
2020年3月11日
神出病院の医療従事者による、患者への虐待・暴行事件に関する声明
認定特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構(コンボ) 共同代表 宇田川健
認定NPO法人コンボは、神戸市西区の医療法人財団兵庫錦秀会神出病院に入院されているすべての患者さんを早急に他の病院に移し、現在、神出病院に入院されている他の患者さんに同じような行為がなかったのか、全数調査をすることを求めます。
医療法人財団兵庫錦秀会 神出病院(兵庫県神戸市)において、患者さんに対して虐待・暴行を行ったとして、看護師ら6人が2020年3月4日に逮捕されました。人道にもとる、重大な事案であることは明らかであり、現在入院されている患者さんの安全を守るために、すべての患者さんを他の病院に移し、全員に同様のことが行われていないかを調査する必要があります。
報道からしかわかりませんが、以下のことから、神出病院が、危険な場所であることは明らかであると考えます。
・昨年(2019年)12月に県警から虐待があるという連絡を受けるまで、病院幹部は誰もそれを把握していないというコメント。
・6人が逮捕されたのは、県警から連絡を受けた昨年12月から4ヶ月後の今年の3月であったこと。
・1月の末に主管する保健所に病院側から連絡を入れ、2月のヒアリングでも病院幹部は虐待の全容を把握していなかったこと。
精神障碍の当事者は、精神科病院の中では、非常に弱い立場になってしまいます。もともと入院施設のある病院という場は、精神科以外のどんな病院でも、外からの目が入りづらい場所です。その中でも特に精神科病院には外からの目は入りづらい特徴があります。
また、入院中に暴行などが行われたとしても、そのことを誰かに訴えることも当事者には怖くてできません。退院しても、何をされたのか、なるべく早く忘れたい場所です。それは入院してみればわかることです。
私(宇田川)は、精神科病院への入院経験者として、昨年12月まで病院側がこのような虐待を把握していなかったことに大きな疑問を感じます。
逮捕容疑の事件は2018年10月にありました。その後も虐待する様子を収めた複数の動画がスマートフォンから見つかっているそうです。長期にわたって繰り返された虐待や暴力行為をなぜ病院側は把握することができなかったのでしょうか。ましてや、県警から連絡を受けた昨年12月から逮捕者が出た今年3月まで、院長を含め、病院幹部と呼ばれる人たちは、何をしていたのでしょうか。 昨年12月に県警から連絡を受けた時点で速やかにすべてを把握し、加害者を警察に告発する責任が病院幹部にはあったのではないでしょうか。
また、未だに会見は開かれておらず、事務部長が取材に応じているだけのようです。院長自らが先頭に立ち速やかに真摯に謝罪会見を行い、事実関係を公表すべきだったのではないでしょうか。
入院中に主に接する医療従事者は、今回逮捕された看護師や、看護助手が中心です。入院している私達、患者はこれら医療従事者から監視されるとともに、こちらからも観察しているような状態になります。虐待や暴力行為をする医療従事者を患者である私達は、把握しています。そして、どの患者がどんなひどいことをされているのか、私達は見ています。入院患者同士での情報交換は日常的に行われます。
病院幹部と呼ばれる人たちがそれを知らないと言い張るなら、この事件について入院患者からの聞き取りや、患者アンケート(学校のいじめアンケートのように)を実施しているのかと、問いたいと思います。
もし、患者さんに実態も聞かずに4か月にわたって現状を座視してきたとすれば、この病院全体がリスク管理の行き届かない、入院患者にとって安心して医療を受け続けるに値しない、とても危険な場所であることを示しています。
上記のような理由により、神出病院全体の体質として、医療従事者による虐待・暴力が日常化している疑いを私たちは持たざるを得ません。
早急に入院されているすべての患者さんを他の病院に移し、他の患者さんに同じような虐待や暴力行為がなかったのか全数調査する必要があります。
神出病院で行われていたことは、人間の尊厳を踏みにじる人道にもとる行為です。とても悲しい行為です。6人の医療関係者が逮捕されただけで済む問題ではありません。責任ある所管行政による早急な対応が求められる緊急事態です。所管する行政関係者に責任ある早急な対応を求めます。
以上
〒272-0031 千葉県市川市平田3-5-1 トノックスビル2
認定NPO法人 地域精神保健福祉機構(コンボ)
TEL 047-320-3870/FAX 047-320-3871