◆神奈川精神医療人権センター 発足 ~聞いて寄り添い回復へ~
日本の精神科医療では「治療」という名の元に身体拘束が当たり前のように行われ、時には明確な理由や説明もないままに強制入院や大量の薬物投与が行われています。1年以上の入院も多く、ひどいものになると50年病院に入っているというケースもあります。近年では高齢化に伴い、身内のいない高齢者が長期間にわたって精神科病院に入れられ、病院で亡くなるケースも増えています。400万人が精神科医療にかかり、30万人が入院、そのうちの45%は強制入院、1万人が治療と称して身体拘束されている日本の精神科医療の現状を多くの人に知ってもらうことも目的として、精神疾患を持つ人の人権を守ろうと、約30年間で9回精神科病院への入退院を繰り返した横浜市磯子区の藤井哲也さん(61)が、「自分の生き方を自分で決められる社会」の実現と、精神科医療にかかっている人たちの人権擁護活動を実施するための障害者や支援者らの相談に応じる「神奈川精神医療人権センター」(KP)を立ち上げました。
精神科病院に入院中の人から電話相談を受けるほか、病院を訪問して面会する。入院経験のある当事者が中心となって活動する。病院を糾弾するというよりも、入院患者の話を聞くことが柱。本人の疑問や不安を引きだして、打開策を一緒に考える。本人が自分の生き方を自分で決められるようになることを「回復」と捉え、回復の経験者集団として同センターが寄り添う。
藤井さんが精神障害者の人権について考えるようになったのは、主治医の勧めで入院中に建築資材を作る仕事に出たのがきっかけ。「薬を減らし、働いてお金を稼ぐ。気持ちが救われた。」 治療の一環として、だるさなどの副作用が強くて飲みたくない薬を強制的に飲まされた経験もある中で、「当事者には治療や入院生活のあり方について、自己決定をする権利があると思うようになった。」と話す。
2005年に最後の入院をした後、当事者団体「横浜ピアスタッフ協会」(YPS)に、スタッフとして関わるようになった。さらに今年5月、「精神医療を受ける当事者が入院先や地域で苦しまないように」と、人権に焦点を当てたKPを発足させた。治療内容や入院生活、退院後の地域での暮らしなどの相談を無料で受け付けている。既に患者の知人や子どもの家庭内暴力に悩む家族らから十件ほどの相談が寄せられ、「手応えを感じている」という。KPの活動を通じ、将来的には障害者差別を禁止する市条例の制定を目指していくという。
KPでの相談は月〜金曜午後1〜4時 電話080-7295-8236
(じんかれんニュース2020年12月号 より抜粋)