「患者レジストリ」を基盤にして、精神疾患の研究推進を図りましょう
レジストリ(registry)とは、記録、登録、登記、台帳の意味です。
「患者レジストリ」とは、「患者が何の病気で、どのような状態で存在しているかを調べたデータバンク」のことです。患者の疾患・治療内容・治療経過などを記録・管理します。がんや糖尿病、指定難病などでは既にこうしたデータバンクが作られており、治療薬の開発に大きく貢献しています。
しかし、残念ながら精神科では他の診療科に比べ著しく遅れを取っています。
「精神疾患レジストリ」では、それぞれの病名を超えて病院や診療所から得られた症状と脳画像や血液検査・遺伝子解析などを集約して経過を追跡することで、薬の反応が均質な集団を抽出することを目指しています。そうしたデータが集まれば、より正確に病気の区分が可能となり、処方の内容を把握して病気の顛末を予測することや創薬・新たな治療・予防法の開発につながることが期待されます。
昨年、日本精神神経学会・日本神経精神薬理学会など関連する学会は、精神疾患の原因解明に歩を進めるための研究について、当事者・ご家族へわかりやすく説明した「精神疾患の克服と障害支援にむけた研究推進の提言 当事者・家族・一般向け版」をまとめました。
この提言によれば、「疾病」としての精神疾患に対しては、ゲノム(遺伝子)、 ブレインバンク(保存されている、亡くなった方の脳の組織)、iPS 細胞(ほとんどあらゆる細胞に 分化することができる万能細胞)、モデル動物(精神疾患を真似た状態の動物)、脳画像などを用いた様々な角度からの研究を行い、これらは一見全く異なるもののように見えても、実は互いに 密に関連していますので、個々の研究を「研究基盤整備拠点」で取りまとめ、互いの研究結果を活かし、原因の解明、そして、より良い診断・治療の開発を目指していく、とのことです。
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